坪背山(壷背山)(つぼせやま)島根県出雲市

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2012年6月23日

猪目峠 →0:40→ 6番石柱 →0:30→ 猪目峠

全歩行時間 1時間10分

 大和朝廷は、朝鮮半島の百済軍救援のため出兵した白村江の海戦(663年)において大敗した後、唐、新羅連合軍の日本侵攻を恐れ、急ぎ西日本各地に城を築城、併せて情報伝達の整備のひとつとして各地に烽火場を置き、国防のために備えた。烽は九州から奈良の都まで情報が伝達できるように、設置されていたものと考えられている。

 出雲国風土記に記載されている烽火山は、松江市の布自枳美烽(ふじぎみのとぶひ)「嵩山」、安来市の暑垣烽(あつがきのとぶひ)「車山」、出雲市の土椋烽(とくらのとぶひ)「大袋山」、多夫志烽(たぶしのとぶひ)「旅伏山」。そして今回登る馬見烽(まみのとぶひ)坪背山(壺背山)」の五山である。

 既に私は坪背山を除く四山に登っており、いずれも展望広がる素晴らしい山であった。坪背山は日本海の先に、遠く隠岐の島まで望む位置にある。従って、日本海より進入する外敵防衛の最前線であり、有事の際には次の烽火山へ情報を送っていたことは、容易に推測できる。

出雲大社前を通過 最初の信号のある交差点を右折

 坪背山の登山口は猪目峠にあり、出雲大社を登山口への起点とすれば、出雲大社の正面前の大鳥居前を通過し、稲佐の浜方面へ向かう。最初に現れる信号のある交差点を右折、県道23号に入り、右に出雲大社の駐車場を過ごす。この先右に出雲大社を過ごし、道なりに高度を上げて行くと、信号のある交差点からは2.8kmで猪目峠へ着く。

右に出雲大社を過ごす 猪目峠

 峠に着くと左右の分岐があり、分岐の右側が弥山猪目峠コースの登山口、左側が今回登る坪背山の登山口である。ただし、坪背山は登山情報などが著名な書籍に掲載されてはおらず、本日現在ではマイナーな山なので、登山口の案内は無いに等しい。

弥山尾根コース登山口 急登の登山口

 猪目峠の分岐を右折し、10m程度先の左側が広くなっている場所に車を置いて登山を開始する。峠に引き返し、出雲大社側へ20m〜30m程度戻ると、右側斜めに登る踏み跡を見つける。なお、この場所には「坪背山」の木札が掛けてあり、道なりに進むと急登が待っている。ただし、この登山道は、坂の傾斜を考慮すると、家族連れのハイキングには勧められない。

坪背山 猪目峠茶屋コース登山口 猪目峠茶屋跡

 そこで島根県の山百選の登山口にふさわしい場所をここに紹介する。峠から鷺浦方面へ10m程度進むと「夢の森うさぎ4.5km」の案内が立っており、この下から左側へ向かうと平坦な「猪目峠茶屋跡」に出る。この茶屋跡の左(南)端が坪背山への登山口である。

茶屋跡の南端より登山開始 明確な道を進む

 右に歴史ある茶屋跡を眺めながら緩やかな坂へ向かう。これだけでも烽火山の坪背山へ向かう期待感が高まる。周囲は樹林に覆われているが、足下に夏草も無く歩きやすい。なお、尾根との合流点付近まで目印のビニールテープをつけておいたので、今年いっぱいは持つだろう。登山口から7分程度進めば尾根道へ着き、明確な登山道に合流する。この合流点付近には昔の道が北へ向かって延びているようだが、途中でこの道は消えてしまう。

すぐに尾根道に合流する 急な坂に取り付く

 尾根道の合流点から先は明確な登山道を進む。間もなく急な坂へ取り付き、少し辛抱して踏ん張れば坂の傾斜は緩やかとなる。左右に草が茂る場所を通過すると、再び急な坂が現れるがこの坂は長く続かない。間もなく345mピークに立てば、三番の石柱が迎えてくれる。

一旦緩やかな道になる 345mピークの三番石柱

 石碑の裏側には「山境灌水流」と書いてあるように見えるが、意味は分からない。ピークからは北東の鷺峠へ向かって道が続いているように見えた。さて、三番の石柱の立つ345mピークを出発、一旦坂を下って登り返せば、周囲に広がる新緑が美しい。

石柱の裏に掘られた文字 四番石柱

 再びピークに立てば、ここには四番の石柱が立っている。後に回り、彫られている文字を確認すると、三番石柱と同じだった。四番石柱の場所から少し立ち位置を北へ移動すれば、木の間越しながら北に日本海を望むことができる。また、眼下に林道を確認、この林道は鷺峠の先から西へ続く林道である。この林道を使えばアップダウンも無く、簡単に坪背山へ向かえそうだ。但し、入口にはチェーンが張られており、車で進入することはできない。

四番石柱から北に広がる展望 眼下には林道が走る

 さて四番石柱を出発、坂を下ればすぐ右に舗装された林道が走っている。坂を下る途中、前方に見えてくる山脈が坪背山の山頂付近と思われる。鞍部に下り、一旦林道付近を散策して元の山道に戻る。北東を眺めると遠くに双耳峰を眺めることができた。

鞍部には芸術的な倒木 尾根の肩に立つ五番石柱

 鞍部の先で頭上を樹林が覆うが、足下はとても歩きやすい。この先より坪背山へ向かって最後の坂へ取り付く。間もなく肩のところで五番石柱を通過、少し右方向へ進路を変えた後、すぐに左方向へ進路が変わる。

長く平坦な尾根道 坪背山山頂

坪背山の山頂風景

 ほんの少し高度を上げると、とても気持ちの良い真っ直ぐな平坦道に着く。この平坦な道が坪背山の山頂と思われる。この周囲には何も目印がないのでもう少し進み、一旦高度を下げる。

鞍部から眺める展望 鞍部から登り返す

展望地から眺める風景

 鞍部付近には倒木が目立つが、この倒木の上に立てば、眼下に稲佐の浜や南に三瓶山などの展望を眺めることができる。但し、倒木の上に立つことは不安定なこと極まりないので充分注意すること。鞍部から登り返せばピークの先に六番の石柱が立っている。

六番石柱の立つピーク

 石柱の左には枯松が立ち、何かの木札が掛けられているが判読することはできなかった。この付近を坪背山と考えることもできるようだ。石柱の先からは踏跡不鮮明となり、下り坂になりそうなので、坪背山の登山はこの付近で終了する。

 少し立ち位置を変えながら周囲を眺めるが、木々の背が高いため、この位置から出雲大社を眺めることはできなかった。ただし、周囲の木々さえなければ展望は確実に得ることがので、坪脊山は烽火山の条件を備えた山であることは間違いない。眼下には木の間越しながら、稲佐の浜の海岸線、その横を走る道などを確認することができたので、帰りに稲佐の浜から坪背山の山頂の位置を確認することにする。

麓から眺める坪背山

 六番石柱前にて同行の中島先生と記念撮影の後、下山を開始。もう昼に近いので四番石柱の下にある鞍部付近で昼食を摂る。昼食は頓原の道の駅で購入した山菜おこわで、山の中で食べるお弁当がとても美味しい。

 昼食後、元来た道を引き返し、猪目峠茶屋跡へ戻る。歴史ある烽火山に比定されている坪背山は、登山道の状況も非常に良いため、多くの人に登って頂きたい山のひとつである。

三番石柱

後に刻まれた文字

四番石柱から北の展望

六番石柱

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歩いた足跡  

登山口周辺の地図はこちら 島根県出雲市 坪背山 登山口付近のMAP

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