英彦山(ひこさん)福岡県添田町

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2010年7月25日

銅の鳥居 →0:25→ 奉幣殿 →0:40→ 中津宮 →0:25→ 行者堂

 →0:15→ 英彦山中岳(上宮) →0:08→ 南岳 →0:08→ 中岳

 →0:30→ 北岳 →0:40→ 望雲台分岐 →0:15→ 望雲台

 →0:10→ 望雲台分岐 →0:10→ 高住神社

 →0:45→ 別所駐車場 →0:15→ 銅の鳥居

全歩行時間 4時間46分

 英彦山は、羽黒山(山形県)・熊野大峰山(奈良県)とともに、日本三大修験山に数えられ、最盛期には多くの僧兵を擁し、大名に匹敵する兵力を保持していたそうだ。

 山口県から九州へ。北九州市から国道322号を走り、一路添田町を目指す。香春町から県道52号に入り、やがて案内に英彦山の文字が現れると、いよいよ目指す山を近く感じる。道の駅「歓遊舎ひこさん」を過ごし、国道500号を進むと、英彦山温泉しゃくなげ荘前を通過。もう少し進むと英彦山花公園電車の案内が現れた。この先に銅(かね)の鳥居バス停を見つけたので、付近の駐車場に車を置き、登山を開始する。

道の駅「歓遊舎ひこさん」 駐車場を出発

 銅の鳥居の手前で「財蔵坊」の案内を見つけた。この坊は英彦山修験道時代3800坊と言われた山伏の家の一つで、これから沢山の坊跡を眺めながらまずは奉幣殿を目指す。石段を登ると右に浄土宗第二祖、鎮西上人の「若き日の一千日求道像」を過ごす。青年時代、現在の北九州市から片道36kmを一千日日参されたそうだ。すぐに国宝「銅の鳥居」へ到着、この大鳥居は寛永14年(1637年)佐賀藩主鍋島勝茂の寄進により建てられたものである。胴の太い青銅製の鳥居を過ごし、なだらかな石段を登る。

浄土宗第二祖、鎮西上人像 国宝 銅の鳥居

 石段の左右にそれこそ沢山の坊跡を眺める。最初に案内のあった福岡県指定文化財の財蔵坊に立ち寄ると、藁葺き屋根の坊を眺めることができた。更に参道を進むと舗装路を横切り、やがて英彦山スロープカーの花駅を過ごす。この付近にはおみやげ物を売る店がいくつか残っている。

財蔵坊 おみやげ物店

 大鳥居をくぐり、左に大きな宝篋印塔を眺める。更に参道を進むと、参道中央に手摺りが施され、左には維新殉国志士の墓地を過ごす。もう奉幣殿まで僅かな階段を残すのみで、一登りすれば平坦な場所に建てられた英彦山神宮奉幣殿へ到着した。

宝篋印塔 奉幣殿

 早朝の境内には誰もおらず、ゆっくり見学をすることができた。大きなヤマメの棲む池を眺め、天之水分神(あまのみくまりのかみ)に参拝、最後に赤い社殿の奉幣殿へ沢山のお願いをし、大鳥居を潜る。

天之水分神 奉幣殿を出発

 さあ、いよいよ英彦山へ向かって出発。階段を少し登れば、左右に道が分岐し、左は英彦山中岳(上宮)へ2.2km、右は玉屋神社へ1.9km、鬼杉3.3kmと案内されている。まずは上宮を目指すため左の道を採る。

左右に道が分岐

 眼下に奉幣殿をもう一度振り返り、石段へ足を踏み出す。すぐに大国主命の祀られている下津宮へ到着。下津宮からは、眼下に奉幣殿を見下ろすことができる。右に石塔の立ち並ぶ場所を過ごし、石段を登ると、フェンスで保護された場所の前を折り返す。少し荒れ加減の石段を登れば、足の置き場所のみ彫られた岩が現れる。

下津宮 彫られた岩

 滑らないよう慎重に岩の上を進むと、鎖の渡された岩場に着いた。鎖の助けを借りながら岩場を通過、なかなかワイルドな参道である。それでも自然石で造られた参道は美しく、やがて奉幣殿より400m地点を通過、周囲に杉林が美しい。

鎖の渡された岩場 自然石で造られた参道

 間もなく「福岡県英彦山野鳥の森」の休憩舎に到着、この場所から本日始めて展望を得ることができた。但し、少し霞のかかった展望なので、遠くまでを見晴らすことはできない。休憩舎の先から上宮までは残り1.7km、奉幣殿からは500mの距離である。

休憩舎と展望

 更に100m進むと坂の傾斜は一旦緩やかとなり、少し息をつく。再び坂を登り、上宮まで1.4km地点まで来ると左にベンチの置かれた休憩所に到着。この休憩所の先に形の良いピークを見つけるが、これが山頂かは判別できなかった。休憩所の先で道の横に座る大岩を過ごし、石段を登ると、上の方で石段は岩の道となり、鎖を補助に岩道を登り切る。

大岩を過ごす 岩道

 この先からは参道を折り返しながら高度を上げ、奉幣殿から1000m標識を通過、上宮までは残り1200mである。すぐに平坦な道に変わり、この先で中津宮への分岐に到着。左方向へ折り返すように進むと、平成5年に建立された大鳥居が建ち、その後には宗像の三女神である市杵島毘売命、多紀理毘売命、多岐津毘売命の祠が祀られている。なお、この中津宮は、英彦山の五合目になるそうだ。

平坦な道 中津宮

 中津宮を出発、木の間越しの展望を眺めながら平坦な道を進む。右に石組みを過ごせば、上宮まで残り1000mとなる。左に祠を過ごし、この先で英彦山青年の家への分岐を過ごすが、この方面への道は少し荒れているような気がする。上宮まではもう残り900m、石段をゆっくり進めば、左手に見える杉林には倒木が目立っている。これは台風の被害かも知れない。

石組み
英彦山青年の家への分岐 倒木の目立つ場所

 右に稚児落の場所を過ごし、木の間から展望を眺めながら進む。道の中央に大きな丸い石を過ごせば、もう上宮まで600m、残りは僅かな距離になった。自然石の石段を更に進めば、「関銭の跡(下乗)」に到着。英彦山参拝の信者は、ここで感謝の気持ちをあらわすため、通行料を納めたそうだ。また、身分の高い人でもここで乗物を降り、徒歩で参拝したと説明されている。

稚児落(写真をクリックすると説明あり) 木の間越しの展望
丸い石を過ごす 関銭の跡(下乗)

 この場所から山腹につけられた広い道を進むと、産霊(ムスビ)神社(行者堂)へ到着、祠の横には水場もある。この水を飲んでみると、冷たくてとても美味しい。今まで歩いた事による疲れも吹き飛ぶくらい美味しい水である。

産霊神社(行者堂) 祠と水場

 行者堂を出発、もう上宮までは残り400m。この付近より今まで頭上を覆っていた樹林が無くなり、体全体に日の光を感じながら、少し荒れ加減の石段を進む。やがて進行方向が右へ変わると頭上には上宮が見えてきた。

荒れ加減の石段 上宮

 間もなく上宮は目の前となり、英彦山中岳へ到着、神宮正面の小さい扉を開けると、神宮上宮の中に入ることができた。歴史を感じさせる英彦山神宮の額に対面、周囲に書かれた落書きには心を痛めるが、沢山の絵馬の飾られた上宮にて、沢山のお願いをした。

英彦山神宮上宮

 上宮の周囲を一周し、目の前にそびえる南岳を確認。水蒸気のせいでかすみ加減の展望を眺めた後、南岳へ向かって上宮から南方面へ下る。南岳へは上宮から200m、鬼杉へは1.5kmと案内されている。少し荒れ加減の石段を下り鞍部に着くと、平坦で細い道が続き、この先からは左手に鬼杉への道(迂回路)が分岐し、右の道は南岳展望台を経て鬼杉へ向かう行程となる。

南岳 中岳に建つ上宮

 まずは南岳を目指して右の道を採る。背後を見上げれば、中岳に建つ上宮がとても気高く見える。高度を上げる毎に上宮は目線に近くなり、やがて水平方向に上宮が見えてきた。南岳へ向かって横木の渡された階段を登ると、平坦な南岳の山頂へ到着、左には彦山大権現の祠が建ち、その奥には大きな一等三角点が置かれている。展望を楽しみに展望台へ向かうと、なんと立入禁止となっていた。

彦山大権現の祠 展望台は立入禁止

 展望台へ登るのをあきらめて中岳へ戻り、北東方面へ向かうと眼下に休憩舎の置かれた広場が見えてきた。坂を下り、休憩舎の中から南東方面の展望を眺める。ただし、まだ九州の山の知識に乏しく、一体どこの山が見えているのか解らない。この広場には英彦山山頂のモニュメントが置かれており、岩の中に立つ英彦山山頂の赤い文字がとても印象的である。昼には少し早いが、ベンチがあるので早めの昼食を摂り、すぐに広場を出発する。

休憩舎の置かれた広場 英彦山山頂のモニュメント

休憩舎からの展望

 九州自然歩道の案内に従い、北東方面へ向かうと、正面に北岳が見えてきた。英彦山には3つのピークがあり、中岳、南岳を踏んだ後、本日最後に目指すのが北岳である。木の間越しに北方面の展望を眺めるが、やはりどこを眺めているのか解らない。大きな岩の間からは冷気が漂い、天然のクーラーのように涼しい。しばらく風を感じて立ち止まると、とても元気になる。これから先は岩をつかみながら一気に高度を下げる。

北岳 岩場を下る

 慎重に足場を選びながら一気に急降下すれば、おもしろいほど高度が下がる。赤ペンキで描かれた矢印に従い、下りて行くのは、とても楽しい作業である。やがて左右を笹原に囲まれた平坦な鞍部に着き、ブナ林を眺めながら進む。中岳と北岳の中間点付近では、1991年の大型台風により、被害を受けたブナ林の再生活動が行われている。中岳方面を見上げれば、木の間越しに上宮が見えており、背後には青空が覗き始めている。

北岳へ向かう ブナ林

 北岳への途中に祀られている不思議な岩を過ごせば、この先で大岩を通過する。背後に南岳と中岳を眺めた後、坂を登ると北岳へ到着。ここでは山頂付近の草刈り作業等が大規模に行われており、たくさんの方が忙しく働いておられた。

何かが祀られた岩 南岳と中岳
草刈作業 磐境(禁足地)

 神仏習合時代からの聖地である磐境(禁足地)を見学した後、北岳を出発。もう少し進めば、木の間越しながら鷹ノ巣山方面が見えてきた。急な傾斜はロープの助けを借りながら、足場を選んで一気に下る。北東方面に広がる尖峰がとても美しく、これはいつまで見ていても見飽きない展望である。

ロープの渡された急傾斜 展望

 やがて鎖の渡された岩場に到着、鎖を伝って下りると美しい花を見つけることができた。 更に滑りやすい石の転がる道を下ると鞍部に到着、高住神社(豊前坊)へは残り600m、平坦な道から左方向へ向かうと、長い階段が待っていた。階段を一気に下れば再び滑りやすいゴロ石の下り坂、滑らないよう細心の注意が必要である。

岩場 高住神社への分岐
長い階段 滑りやすい下り坂

 溶岩の壁の案内を見つけたので上を見上げると豪快な岩壁が広がっていた。これはまさしく溶岩の壁、とても感動する風景である。この先で「救世安民」の石碑を過ごし、自然林の下につけられた石段を下る。周囲の青葉が美しく、ほっとする風景が広がっている。木漏れ日の美しいシオジ林に感嘆しながら坂を下っていると、間もなく望雲台への分岐に到着した。本日のもう一つの楽しみはこの望雲台に立ち寄ることである。

豪快な岩壁 「救世安民」の石碑
シオジ林 望雲台への分岐

 岩の間を右へ向かって進むと岩場に鎖が渡されている。ここで思わず息を呑む。急な岩斜面を鎖を伝い、足下に掘られた穴に足を乗せながら高度を上げる。やがて岩の先に出る手前で、石が引っかかっているような場所へ着く。この石を乗り越えるのに足が上がらず少々焦る。そして出た先の右の岩壁に鎖が渡されていた。

急な岩斜面を

 もうこの時点で足はがくがくしている。それでもこの場所はすごい展望台だと確信し、鎖を伝って。岩の上に立つ。ところが鎖はまだ前方へ向かって進んでおり、鎖をつかみながらへっぴり腰で前方へ進む。来た方向を振り返るとなんと狭い場所を歩いている。また、その先には大岩がそびえており、これは素晴らしい景色である。

岩の上に立つ 振り返れば大岩

 さて、もう少し前方へ進めるので鎖をつかみながら進む。すぐに樹林が頭上を覆い、これからどこに行くのかとわくわくしながら狭い道を進む。すると苔むした岩壁が現れ、ここには鎖が渡してある。足下には足を乗せるためのスペースが掘られており、ゆっくりと高度を上げる。

苔むした岩壁

望雲台 足元は狭い

 頭上にはポールの間に鎖が渡されたように見えるので、一体何があるのかと思いながら更に高度を上げる。やがてポールの下まで来ると、これはすごい。すごいすごい。すごいとしか言いようのない景色が目の前に広がってきた。この岩壁の向こうは断崖絶壁、足下はとても狭く、滑ったらひとたまりもない。ポールに渡された鎖をつかみながら場所移動。やはり足はがくがく震え、素晴らしい景色を眺める。こんなスリルは久しぶりである。

すばらしい望雲台

 しばらく周囲の展望を眺めた後、望雲台を出発、鎖を伝って下りたが、もう一度この景色を味わうために鎖を伝って望雲台へ。何回登っても怖いものである。再び展望を楽しんだ後、望雲台を出発。岩壁の鎖場でご夫婦と遭遇、岩壁の付近を行ったり来たりしながら鎖場を楽しんだ。その後鎖を伝って岩場から下るが、足ががくがくするのでとても慎重に下ることになった。岩場の下に着いてようやく安心、これはすごい場所である。

石塔のような岩 下から見上げると青葉に覆われている

 望雲台の分岐まで戻り、坂を下る。正面に大きな石塔のような物が見えている。これは横から見ると岩壁なのだが、見る角度により塔にも見えるようだ。これは火山活動の際の火砕流が固まってできた凝灰角礫岩で、逆鉾岩・屏風岩・筆立岩などの説明があり、自然林の下に立つ岩はとても素晴らしい。

岩の横を抜ける 高住神社側の登山口
豊前坊龍神大天狗の霊水 豊前坊

 間もなく堰堤を過ごし、沢を渡ればすぐに高住神社へ到着。豊前坊龍神大天狗の霊水を頂きのどを潤す。ここまで消費した水分は3.5リッター、残りは1リッターである。豊前坊に参拝し、登山の無事に感謝。石段を下ると茅で作られた輪をくぐる。

樹齢850年〜900年の天狗杉 茅の輪

 この茅の輪は、毎年土用の丑の日に高住神社で行われる夏越祭に使われ、茅の輪をくぐることで悪疫災難を防ぎ、健康長寿を祈願するそうだ。この先に流れる獅子の口の霊水を頂き、これからの行程を考える。

獅子の口の霊水 高住神社大鳥居

 このまま舗装路を下るのも味気ないので、再び山頂を目指し、下山は鬼杉経由で下りることにした。再び高住神社の石段を登り、樹齢850年〜900年の天狗杉を過ごし豊前坊に参拝。登山口を出発し、堰堤の先まで来ると突然ゴロゴロと怪しい音が聞こえ、雨がぱらぱら降ってきた。更に雷鳴が轟いたところで、あっけなく登山中止。急いで高住神社まで戻った。

高住神社の石段 神牛

 するとバケツをひっくり返したような大粒の雨となり、ものすごい雷雨となった。一時間程度雨宿りをしていたら、少し雨足が弱まったので神社を出発。軽い気持ちで傘を差し、舗装路を歩いていたら、再び雷鳴が轟いた。更にものすごい雷雨になったので、とうとうカッパを着て下りることにした。

再び登山道へ 雷雨

 この先はのんびりと・・・とは行かないが、雷にびくびくしながら九州自然歩道を下り、別所駐車場までは高住神社から45分で到着。更に舗装路を15分歩いて銅の鳥居の駐車場まで戻った。ずぶぬれ状態なのだが、何故か爽快感のこる最後だった。

奉幣殿

上宮

彦山大権現の祠

英彦山山頂

北岳の磐境(禁足地)

望雲台からの展望

岩壁

高住神社

茅の輪

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歩いた足跡  

登山口周辺の地図はこちら 福岡県添田町 英彦山 登山口付近のMAP

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