山(かもやま)島根県美郷町

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2012年3月20日

未舗装道入口 →0:20→ 女良谷登山口 →0:40→ 鴨山山頂 →0:15→ 林道北登山口

 →0:12→ 鴨山 →0:30 →女良谷登山口 →0:20→ 未舗装道入口

全歩行時間 2時間17分

 山口県の山(山と渓谷社)の著者、中島先生のご案内により、昨年来の懸案だった島根県美郷町の鴨山へ向かう。この山については、とても感慨深く、登山に至るまでの経緯を振り返るだけでかなりの時間を要する。しかし一番大切なことなのでしっかりと記録しておく。

鴨山登山へ至る経緯

 昨年(平成23年)4月17日、世界遺産の石見銀山遺跡、矢筈城跡へ登った。その後少し時間が余ったので、中島先生と一緒に鴨山の登山口を探すことにした。その際、美郷町の斎藤茂吉鴨山記念館へ立ち寄り、鴨山の登山口についてお訪ねしたところ、分からないとの返事だった。

 次に湯抱温泉街を通り抜け、鴨山を眺める場所に立ったが、左へ続く未舗装林道がどこまで通じているのか、車で乗り入れることができるのか。この時点では全く情報が無く、すごすごと引き返した。

 この日以降、いつか鴨山に登りたいと言う思いだけは持ちながら、歴史とロマンあふれる島根県の山へ次々と向かっていた。その結果、昨年(平成23年)中に島根県の主要な山々へは登ったつもりでいた。

 今年(平成24年)に入り、島根県へ本店を置くS銀行のS本部長、N支店長とお話をする機会があり、その際に島根県のおすすめの温泉についてお尋ねしたところ、美郷町の湯抱温泉を勧められた。この時には、聞き覚えのある温泉という程度で、翌日場所を調べるため、手帳にメモをしておいた。

 当日は、これ以外に島根県益田市の権現山(比礼振山)に置かれている「地球安全祈願塔」についてのお話もあり、この塔には「権現仙人の由来」が彫られていることをお聞きした。簡単に内容を説明すると次の通りとなる。

 明治43年(1910年)3月18日に権現仙人が権現山へお礼参りに来て、予言したのは、「今から百年をすぎたころから、逐次地球上に大異変が起こり、大地震、大津波、天候不順が続き、害虫が多発し、人類が滅亡する時期が必ず来る」また、「文明は月日に進歩するが、一方では地球上を破壊し人体を毒化しつつあるから・・・」とも書かれている。まさに百年後に起きた東日本大震災を予言するような警告文である。

 さて、話を元に戻し、この湯抱温泉について翌日調べてみると、この温泉こそが鴨山の登山口であったことを思い出した。そこで、失礼ながらN支店長へお願いし、S銀行のネットワークによる、鴨山登山口の情報収集を依頼した。

 さすがに銀行のネットワークは素晴らしく、ほんのわずかの間に斎藤茂吉鴨山記念館など多くの資料を送付して頂いた。また、併せて登山口について調べてもらった結果、やはり鴨山へ登った人はいないとの回答だった。

 そこで、今度は私が美郷町の観光協会(商工会)へ直接連絡し、鴨山の登山口情報などを調べて頂くようお願いした。このとき、商工会のDさんより連絡を頂き、やはり鴨山へ登った人はいないと言うことと、鴨山の南と北を走る林道は車で乗り入れることが可能であるという情報をお聞きした。また、鴨山に関する航空写真や地形図も用意してあり、中村旅館さんへ預けておくとのご配慮までして頂き、感謝の気持ちを持って、念願の鴨山へ向かうことにした。

 

いよいよ鴨山へ

 山口県の岩国市から島根県の美郷町までは、高速道路を走れば約2時間半で着く。岩国を午前7時に出発し、川本町で道の駅に立ち寄り、その後は江の川沿いを進み、午前9時半頃に美郷町粕淵地区に到着。

美郷町の粕淵地区に到着 斎藤茂吉鴨山記念館を左に過ごす

 ここで国道375号に入り、湯抱温泉へ向かう。やがて湯抱温泉の案内を確認、すぐに斎藤茂吉鴨山記念館を左に過ごし、湯抱川沿いを北上する。間もなく湯抱温泉街に着き、中村旅館を訪ねる。この旅館の大女将さんより商工会のDさんからの書類を頂く。

お世話になった湯抱温泉中村旅館 鴨山公園入口(写真をクリック)

 封筒の中には詳細な図面と、鴨山の航空写真が入っており、とても助かった。さて、中村旅館前の橋を渡りT字路を左折、そのまま川沿いを北西へ進むと右に古いお寺を過ごす。更に少し先には鴨山公園への案内が立っているので登山前に公園散策をする。

斉藤茂吉の歌碑 鴨山公園から眺める鴨山

 公園には「人麿が つひのいのちを終はりたる 鴨山をしも 此処と定めむ」の歌碑が置かれ、「万葉集歌人の柿本人麻呂終焉の地」と斎藤茂吉が断定した鴨山は、すぐ目の前に聳えている。これから登る鴨山をしばらく見上げていると、とても魅力あふれる山に見えてくるから不思議だ。

登山口から眺める鴨山 登山口を出発

 公園入口まで引き返し、そのまま舗装道を道なりに進むと、右上の民家へ向かう道の手前を左に下る道を見つける。この分岐の手前には駐車スペースがあるので、車を置いて歩き始める。ここから歩けば丁度良い足慣らしができそうだ。正面にそびえる鴨山を写真に納めて未舗装林道へ向かう。

清流 女良谷川 橋を渡れば登山口は近い

 なお、事前の地図読みにより、中島先生は女良谷(めらだに)を登山口とした鴨山の南西尾根より取り付くコースを推奨、私は北の林道を利用し、北側から比較的平坦な尾根を下ることを考えた。審議の結果、最初は中島ルートの女良谷より取り付き、万一ヤブ漕ぎに難渋すれば、北尾根ルートを採ることに決めている。

この先で進路は右(北)へ変わる 右に登山口が現れる

 林道は、先日来の雨のためぬかるみ、滑りやすいので注意しながら進む。やがて女良谷川に架かるコンクリート製の橋を渡ると、この先で林道は右(北)へ進路を変える。右側に注意しながら10m程度進むと、細い木に地積調査のテープが巻いてあり、入口付近の竹はすっかり刈り払われている。とても歩きやすい環境を目の前にして、喜ぶ前にびっくりしてしまった。

登山口に入り右へ迂回する 山腹を迂回しながら進む

 とは言っても、正面に立ちはだかるのはとても急な斜面、地積調査のテープは急な斜面を直登しているが。岩の目立つ斜面なので、一般の人に直登を勧めるわけには行かない。ここは歩きやすい場所を選びながら、斜め右方向へ迂回する。

右上方向へ迂回しながら高度を上げる 折り返しながら高度を上げる

 少し高度が上がってきたところで更に右方向へ迂回し、折り返すように左方向へ進む。折り返しの付近で、少し急な斜面となるのだが、間もなく地積調査の踏み跡に合流する。この先からは樹林がすっかり刈り払われており、地積調査の杭とテープを目印に尾根を目指す。足下には刈り払われた笹がとても明るく、坂は急だが快適な登山道をゆっくり進む。

明確なる尾根道へ着く 岩の多い急な斜面を登る

 新旧の境界杭を確認しながら進んでいると、足下には岩が多いことに気づく。そういえば、柿本人麻呂は石見の国において、死に臨んで最後の歌を「鴨山の 岩根し枕ける われをかも 知らにと妹が 待ちつつあらむ」と詠んでいる。まさかこの岩のことを詠んだのだろうか、と思いながら急登を踏ん張る。

新旧の境界杭 平坦な道にほっとする

 やがて少し傾斜が緩みほっとするが、すぐに滑りやすいガレ場が現れる。西を眺めると木の間越しに、大釣山が美しい山容を見せており、その山腹には林道らしき水平な線が続いている。さて、登山最初に比べれば、格段に歩きやすい坂道をゆっくり登れば、左側に作業道の跡を見つける。

ガレ場を過ごす 大釣山がとても近い
左に古い作業道を過ごす 尾根へ向かって最後の急登

 この先で急登を踏ん張ると、ようやく平坦な尾根へ到着、この先から北西へ向かって平坦な尾根道が続く。なお、このピークから南東方面へも地積調査の踏み跡が続いており、この方面からも今の状態であれば道が続いているようだ。

尾根へ着く 平坦な尾根道を進む

 さて、いよいよ鴨山へ向かう平坦な尾根道に取りかかる。周囲には赤松が多く、進行方向へ続く笹は、全て刈り払われ、何の心配もない道が続いている。のんびり平坦な尾根道を進むと、間もなく鴨山の山頂へ到着。山頂には立派な赤松が立っている。細長い山頂にて記念撮影、周囲を見回せば、唯一見えるのは木の間越しながら西に大釣山。南東方面に集落が見えそうだが、周囲の木々の背が高く、はっきり断定することはできない。

鴨山の山頂へ到着

鴨山の山頂と周囲の風景(動画)

山頂から眺める大釣山 南西方面を眺めるが展望はない

 さて、鴨山の山頂まで来たので、林道へ続くルートを確認するため、更に尾根道を北へ向かう。刈り払われた笹の道は、この時期限定の登山道、誰も歩かなければ、一夏で背の高いヤブに戻ってしまうことだろう。木の高い位置に目印のテープを巻きながら、気持ちの良いアップダウンを繰り返す。

山頂から北へ向かって出発 緩やかなアップダウンが続く
「みつわ」の石杭 北の林道へ着いた

 いくつか作業道の跡を過ごし、尾根道を進むと、間もなく鴨山の北側を走る林道へ到着。周囲が明るくなったので、平坦な舗装道の上で豪華昼食を摂る。食後の珈琲を飲んで林道を出発。林道の登山口から、高度を下げながら鴨山へ引き返す。

北尾根コース登山口を出発

 林道からわずか15分で、万葉のロマンあふれる鴨山の山頂を通過。更に登山口まで急な坂を下る。元来た道を引き返していれば、西に広がる大釣山が美しい山であることに気づく。これぞ下山の勧め、山を下りる時にはいろいろなものが見えてくる。

山頂を通過 快適な道を下る

 やがて登山口の林道へ到着、林道途中の風景を眺めながら登山起点の分岐まで戻った。そのまま車に乗り込み林道を北へ進む。途中の右手に中国自然歩道の案内を過ごし、林道のT字路へ到着。分岐を左折し1.6km進むと、先ほど昼食を摂った鴨山の北側登山口へ到着した。

湯抱川沿いを北上 右に中国自然歩道を過ごす
 

 こちらの林道側を登山口として、山頂を目指す場合、ほんの少しのアップダウンがある程度。わずか15分で、「柿本人麻呂終焉の地」と歌人の斎藤茂吉が断定した鴨山に立つ事ができる。この場合、登山口が山頂よりも少し高いので、登山口へ戻る際の方が多少汗をかくかも知れない。いずれにしても、この道を誰も歩かなければ元の笹藪に逆戻り。次回この山へ向かう際に、果たしてこの道は消えずに残っているだろうか。

T字路を左折 T字路分岐から1.6kmで北尾根コース登山口

鴨山山頂

登山途中に眺める大釣山

 前の山 奥滝山 を見る

 次の山 大釣山 を見る

歩いた足跡 1/6000  

歩いた足跡 1/12500  

登山口周辺の地図はこちら 島根県美郷町 鴨山 登山口付近のMAP

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