玉山(ぎょくさん・ユイシャン)塔塔加登山口から排雲山荘まで 台湾

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2009年4月15日

塔塔加登山口 →0:45→ 孟祿亭 →1:37→ 白木林休憩亭

 →1:00→ 大峭壁 →1:01→ 排雲山荘

全歩行時間 4時間23分

 登山や写真の撮影技術など、多岐にわたってご指導をして頂いている中島先生と一緒に、台湾を訪問。山口県日台交流協会(会長 重冨剛克)の交流事業として、前半の日程は日本と台湾の交流を深め、併せて台湾の文化や観光施設を紹介するための取材を実施。後半の日程は東北アジア最高峰、日本では新高山として知られている玉山(ユイシャン)の取材を兼ねた登山である。以下は、会報に載せるために記録した、私の登山日記である。

 東北アジア最高峰の玉山へ向かう。昨日登山ガイドの施(シー)さんより、今日の天気は良くないとの情報が入っていたが、窓の外はよく晴れている。これは良い方の外れだ。午前7時過ぎに宿泊地である阿里山賓館の展望地から大塔山方面を眺めていると、少しずつ日が差し、周囲の展望も美しい。大塔山の下には登山列車の線路とトンネルも見えており、電車に乗ればこの山腹を縫って進むことも出来るようだ。

阿里山賓館の展望地から大塔山方面を眺める 阿里山賓館を出発

阿里山賓館の展望地から大塔山方面を眺める(動画)

 7時半過ぎに朝食を終え、施さんとホテルの送迎車に乗り阿里山駅へ着くと、既に運転手の陳さんが待っていた。本日の昼食をコンビニに行き調達、カップラーメンも食べることが出来るそうなので、薄味のラーメンを選び、お稲荷さんとおむすびを購入、これは日本での登山と全く一緒である。

阿里山駅 コンビニにて昼食を購入

 本日の装備は着替え一式(上着からズボン・下着や靴下・Tシャツ、別にヒートテックの上下を含む)にシュラフ・手袋(登山用手袋2セットにスキー用手袋1セット)、水分はポカリ500mlを併せて合計2.7リッター(結局2リッター以上廃棄となる)、ウインドブレーカーにゴアテックのカッパ、ロングスパッツに帽子、ザックカバーにヘッドライト、食器に箸・スプーン・コップ、ウイスキーにおつまみ沢山。これでも重さはいつもと大きく変わらない。

楠渓林道の入口付近から阿里山方面の展望

 阿里山駅を出発し、乗用車で30分走ればトイレの整備された楠渓林道の入口に着いた。ここから少し舗装道を登って行くと玉山警察隊塔塔加小隊の事務所があり、施さんが登山の届けをする。次にその横に立つ排雲管理事務所に行き、パスポートを提示する。登山許可の確認の後、登山の心得と併せて玉山の紹介ビデオを観賞、これはまるで研修のようだ。

楠渓林道手前の駐車場 楠渓林道を進む
玉山警察隊塔塔加小隊 排雲管理事務所

 管理事務所を出発すると、この先は送迎用のワゴンに乗り塔塔加登山口に向かう。舗装道を走ればすぐに海抜2610mの登山口に到着した。登山口からは当然玉山まで登山道が続いているのだが、背後には3381mの南玉山、その先には3582mの小南山への登山口も設置されている。また、登山口には簡易トイレも3基設置され、とても整備されている感じがした。

玉山登山口 向かいには南玉山への登山口

 登山口には20人以上のグループがそれぞれ記念写真を撮っており、ものすごく賑やかだったが、この一団が登山口を出発すると同時に付近は静かになった。さあ我々三人も玉山主峰3952mを目指して出発、時刻は午前9時47分だ。本日は標高3402mの排雲山荘までの8.5kmの行程、登山口の標高が2610mなので標高差約800mを登る。

登山口からは平坦な道が続いている

 整備された登山道に入ると、ほとんど平坦な道が続いており、余裕を持って歩くことが出来る。但し、昨日標高30mの嘉義から標高2170mの阿里山に着いた際には、軽い高山病にかかり、少々頭がフラフラしていた。一泊したことにより頭のフラフラ感は少し解消されている。但し、本日もすでに標高2170mの阿里山から440mの高度を稼いでいるので、少しのどが詰まった感覚がいつもとは違う。また、頭を振るとやはりフラフラするので、すでに高山病の兆候は出ている。

最初に見つけた花はスミレの花 少し進んで登山口方面を振り返る

 先頭はいつもの山歩きと一緒で先生が歩き、次に施さんが続く。私はいつものように最後尾からゆっくり写真を撮りながら進む。最初に見つけた花はスミレの花、なかなか可愛い花が咲いている。この先ですぐにガレ場を踏むことになり、慎重に歩を進める。眼下に大きく滑り落ちたような場所を通過すれば、足下には小石混じりの歩きやすい道が続く。

ガレ場を進む、足下は切れ落ちている

 右手が切れ落ちた難所には鎖も設置されており、ゆっくり進めば問題は無い。但し標高は高いので、高山病がこれ以上進行するのが一番怖い。施さんからはいつも「ゆっくり」と言う言葉が出ている。山腹につけられた道を進めば、整備された橋を渡る。今日はこの橋を82回渡れば排雲山荘だ。

難所には鎖が渡されている 最初の橋を渡る

 登山開始から13分、丁度午前10時に塔塔加登山口から500m地点に到着、これから500m毎に距離の標識を過ごす。周囲にツツジの花を眺めながらジグザグに坂を折り返していたら、20名以上の大集団に追いついた。ここでこの一団を我ら3名が追い越す。

最初の500m標識 ツツジの花を観賞

 少し伸びたワラビを眺めながら進めば、13分で次の500m標識に到着、残りは7.5kmだ。やはり足下は小石混じりの道が続き、ピンクのツツジが美しい。相変わらず平坦な道が続くのだが、登るばかりではなく、少し下る場所もある。周囲には松も目立ち、日本の山と何ら変わらない感じがする。

小石混じりの登山道 周囲には松が目立つ

 少し坂を折り返すようになり、岩肌を観察してみると断層のような岩であることが分かった。眼下には切れ落ちた孟祿(モンロー)断崖が広がっており、滑り落ちれば一溜まりもない。足下に名残の馬酔木の花を過ごせば、周囲は日本庭園のような松が広がる。

断層のような岩 眼下には孟祿(モンロー)断崖

 遠くに小さな休憩小屋が見えてきた。これは多分孟祿亭と思われる。頭上を見上げれば、岩が露出しており、周囲に目立つ落石注意の標識が頷ける。岩の転がる少々足場の悪い場所を過ごせば、特徴的な立ち枯れた木を過ごす。ここで500m標識を通過。山荘まで残り7kmで、前の標識からは16分、少し疲れたようだ。

頭上には岩が露出している 特徴的な立ち枯れた木

 更に3分で孟祿亭の休憩所に到着、ここには東屋とたくさんのベンチが置かれている。この地点は海抜2838m、ベンチの上には人なつこい鳥がちょこんと立っていた。休憩所にてゆっくりしていたら大集団がやってきたので出発する。

孟祿亭の休憩所

 孟祿亭から少し進むと右手にはトイレが設置されている。これはバイオトイレ(エコ・ドライトイレ)で、分解速度を速めるために用を足した後、時計周りにハンドルを3回回すように説明してある。このトイレからもう少し進めば500m標識、休憩等に要した時間を除けば、前の標識からは10分で到着。残りは6.5km、まだまだ先は長い。

バイオトイレ(エコ・ドライトイレ) 残り6.5km、足下には小石混じりの道

 向かいの山には雲がかかり、眼下には楠梓仙渓が広がる。施さんは遠くに滝もあるというのだが、これはよく見えなかった。前方に形の良い木を眺めながら進んでいると、白い花のようなものが目立ってきた。これは霧から水分を取って成長している植物である。沖縄で見たものと色は違うが、生命力の強い植物のようだ。

周囲には雲が増えてきた 霧から水分を取って成長する植物

 周囲にはシャクナゲの花を見るが、写真の対象となる近い位置には咲いていない。目の前に大きな岩が現れたので岩の上に登ってみる。岩の上からは素晴らしい景色が広がっていた。再び坂を下りて行けば、岩の点在する場所を通過、浮き石もあるので少し慎重になる。

シャクナゲ 大岩の上に立つ
ガレ場を通過 頭上に咲くシャクナゲ

 頭上に咲くシャクナゲを眺めていると背後から大集団、追い立てられながら歩いている気がする。間もなく500m標識、前の標識からは18分を要した。残りは6km、まだまだ先は長い。周囲には薄日が差し、眼下には渓谷の流れが見えてきた。遠くには滝も流れており美しい景色に感動する。

眼下には渓谷が広がる 遠くには滝が見える

 この先からは落石注意、左に岩を眺めながら進む。足下には岩が点在し、背後の登山者の上には岩壁が聳えている。正しく落石に注意が必要な場所だ。もう少し進むと階段状の岩が並び、左手には玉山前峰まで0.8kmの標識が立っている。この場所は登山口まで2.7km、排雲山荘までは5.8kmの位置である。また、海抜2823mの高度に位置し、空気が薄いことを実感している。

この先落石注意 背後の登山者の上には岩壁が
階段状の岩が続く 玉山前峰の分岐

 正面には岩壁が続いており、正に断崖の下を歩いていることが分かる。右手が切れ落ちているので鎖を掴みながら慎重に歩く。間もなく500m標識、残りは5.5kmである。前の標識からは12分、ペースがなかなか一定しないのは写真を沢山取っているからだと思う。危険な場所には橋が設置されているが、頭を岩で打たないよう、リュックが岩に当たらないよう注意しながら進んでいる。

正面には岩壁が続く 危険な場所には橋が設置されている

 平坦な道なので大した苦労でないと思っていたが、標高が高いためなかなか苦労している。岩場に渡された橋、岩と岩を繋いだ橋など特徴的な橋が続くのでワクワクしながら橋を渡る。玉山草花の説明板の立つ場所が海抜2836m、なかなか高度が上がらない。周囲にシャクナゲを眺め、割れたような岩を踏みながら進んで行く。

岩場に渡された橋を渡る 一定方向に線の入った特徴的な岩

 足下を眺めると一定方向に線の入った特徴的な岩を踏んでいたことが分かった。間もなく500m標識、前の標識からは12分の行程である。もう残り5km、既に本日の総行程の1/3以上を歩いている。前方には岩の壁が広がり、足下には19番の橋を過ごす。

岩壁が続く 石と倒木の道

 周囲の緑が美しく、大きな木を眺めながら進む。再び500m標識が現れ残りは4.5km、前の標識からは14分の行程である。身体全体に緑のシャワーを浴びながら、美しい展望を満喫しながら進む。背後には尖峰の玉山前峰3239mが聳えており、この山へは一気に登ることになるそうだ。施さんの表現では登る!・登る!・登るね!・・・・と言うことだ。

緑のシャワー 玉山前峰3239m

 ほとんど平坦な道を進めば500m標識、残りは4kmようやく中間点を越えた。前の標識からは15分の行程である。足下には小石が点在し、シャクナゲも見ることが出来る。もう少し進めばガレ場を通過、浮石に気をつけながら通過する。上を見ても下を見ても岩・岩・岩、もし岩が落ちてくれば大変なことになる場所である。この付近では沢山の下山者とすれ違う。

ガレ場を通過 上を見ても下を見ても岩・岩・岩

 立ち枯れた木の下には大渓谷が広がる。素晴らしい景色を眺めていれば40番の橋を通過した。更に進めば左手に岩場が続き、足下の岩を慎重に踏みながら進む。左上にバイオトイレが見えてくれば間もなく500m標識、もう残りは3.5kmである。前の標識からは16分の行程で、この付近は3096m、いつの間にか3千メートルを超えていた。

立ち枯れた木の下には大渓谷 左手に岩場が続く
2つ目のバイオトイレ 白木林の説明板の高度は海抜3096m

 この先には白木林休憩亭があり、階段を登れば屋根付きの広い休憩所が設置されている。時刻は12時20分、ここで昼食を摂る。本日のメニューはカップラーメンとお稲荷さんとサケの照り焼きのおむすび。いつもながら豪華な昼食だ。昼食の後は,papaさんより餞別に頂いたゴディバのコーヒー、本日はバニラ風味を頂く。これが最高の味で周囲の人にもお裾分け。足下を見回すとリスがうろうろしており、人なつっこい鳥が登山者の落とした食べ物をあさっている。

白木林休憩亭 豪華昼食

鳥とリス

白木林休憩亭から周囲の展望(動画)

 約20分の休憩の後、休憩亭を出発、周囲は曇り始めてきた。これから先は少々きつい登りが始まる。滑り易い木の階段を登り、岩の点在する場所を通過する。休憩亭からは20分で500m標識を通過、残りは3kmである。背中に荷物をしょって歩く原住民の紹介がされており、この場所は3138m、残りの標高差は約360mだ。

滑り易い木の階段 岩壁の下を進む

 岩壁の横を抜け、いかにも落石の起きそうな場所を通過すれば残りは2.5km、前の標識からは18分の行程である。周囲には霧が発生し、視界が狭くなってきた。木の根の張る道を慎重に進めば13分で次の500m標識に到着、残りはもう2kmだ。更に9分で標高3173mの大峭壁に到着。大きな岩壁を見上げながら小休止を取る。

周囲には霧が発生 海抜3174mの大峭壁

大峭壁(動画)

 高度は大して上がっておらず、まだまだ先は長いような気もする。大峭壁を進むこと10分で残り1.5km標識、着実に排雲山荘に向かって進んでいる。周囲は霧に包まれており、とても幻想的な景色が広がっている。鎖の渡された危険箇所を過ぎれば、左右に矢竹の茂る場所が現れる。

危険箇所 矢竹の茂る場所

 少し空気が澄んでくれば周囲の展望が素晴らしい。松の木の下を抜けて行き、71番の橋を通過すれば残り1km標識を過ごす。もう残りは僅かであり、前の標識からは15分の行程である。この先で階段を下りて登り返し、この山に入って初めて清水を眺める。

松の木の下を抜ける 階段を登り返す

 左手に無造作に伐採された大木を過ごし、70番の橋を過ごせば残りは500m、いよいよ排雲山荘は間近だ。前の標識からは19分の行程である。霧の中を少しずつ高度を上げて行き、岩壁に渡された橋を渡ればもう残りは僅か。

大木を横に過ごす 左手に岩壁が続く

 岩壁を左に見ながらいよいよ82番の橋を通過、更に進めば石段が見えてきた。目の前に排雲山荘到来!!の標識が立っており、この先のカーブを折り返せば排雲山荘に到着、海抜3402m地点に無事到着した。前の標識からはゆっくり19分の行程である。

82番の橋を通過 石段が現れる

排雲山荘に到着(動画)

海抜3402mの排雲山荘

 時刻は午後3時32分。少し霧の立ち籠める山荘だった。山荘の中に入り今夜の宿泊場所を教えて貰う。そんなには狭くない感じがする。リュックを置き。腰を下ろして一休み。空気が薄いことを感じながら深呼吸。暫く座っていたらようやく落ち着いた。その後は周辺散策、もう少し進めば飲用水のタンクに蛇口が設置されており、一口飲めばとても美味しい。

玉山主峯まで2.4km 飲用水のタンク

 右手にはトイレが設置されており、ここは水洗トイレなのだが、手動水洗トイレ。水をバケツに入れて流すようになっている。また、私にとっては初めての経験なのだが、おしりを拭いた紙は、備え付けの箱の中に入れ、絶対に流してはいけない。また、階段を登り先へ進めばこの先は玉山への登山道だ。

玉山へ続く登山道 赤い屋根がトイレ棟

 山荘に引き返し、持参したウイスキーを玉山の水で割って飲む。夢に描いた事が実現した。山荘の外に出て霧に霞む風景を眺めながら飲むお酒は格別だ。午後5時前から調理が始まり、周囲には美味しい夕餉の香りが立ちこめ、間もなく豪華な中華料理の晩餐が始まった。

調理中 夕食は豪華な中華料理

 多くの種類のごちそうを頂き、夕食を終了。先生・施さんと明日の出発時間について打ち合わせをする。天気が悪いそうなので、ご来光は無理。従って午前5時の出発とした。その後、午後6時前まで周囲を散策し、7時過ぎからは寝袋の用意をする。ヒートテックに身を包み、ダウンジャケットの上にウインドブレーカーを着込む。これだけ着込めばもう寒くはない。

 周囲が暗いので早めに寝床につく。あかりがないので横になっていたら周りの人がいびきをかき出した。もうこうなったら寝るしかないので横になっていると、一定感覚で頭痛がし、時折息苦しい感覚に襲われる。大きく深呼吸をし、楽になった途端に寝ているようだ。のどの詰まった状態は解消されており、少しずつ高地に慣れてきた。

大塔山

塔塔加登山口

鎖の渡された登山道

岩壁が続く

排雲山荘

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