宮之浦岳・黒味岳 (みやのうらだけ・くろみだけ)鹿児島県屋久島町 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年10月18日 淀川登山口 →0:40→ 淀川小屋 →1:10→ 小花之江河 →0:10→ 花之江河 →0:15→ 黒味岳分岐 →0:25→ 投石平 →1:00→ 翁岳分岐(携帯トイレブース) →0:35→ 宮之浦岳 →0:30→ 翁岳分岐(携帯トイレブース) →1:00→ 投石平 →0:15→ 黒味岳分岐 →0:40→ 黒味岳 →0:25→ 黒味岳分岐 →0:15→ 花之江河 →0:10→ 小花之江河 →1:10→ 淀川小屋 →0:40→ 淀川登山口 全歩行時間 9時間20分 朝食後、午前4時に民宿を出発。途中の日ノ出弁当で予約しておいたお弁当を受け取り、屋久杉自然館方面へ向かって交差点を右折。そのまま道なりに進んでいると、屋久杉自然館前には多くの人がいた。これは縄文杉へ向かう人たちである。ここで検問のようなものがあり、どちらへ行くのかを聞かれた。宮之浦岳へと言うと、気をつけてと言われて解放された。これは、縄文杉の荒川登山口へは車両の進入が禁止されていることによる処置である。
さて、広い道を進んでいるとやがて道路幅が狭くなりヤクスギランドを通過、くねくねした道を更に進めば、紀元杉・川上杉を通過、午前5時に淀川登山口へ到着した。狭い駐車場には駐車スペースは少なく、トイレ横に車を置いて登山準備をする。当然周囲は真っ暗で、ヘッドライトが無ければ何も見えない。まず先行者が登山を開始、次の人も準備をしていた。 アップダウンが続く 登山準備の後、標高1360mの淀川登山口を午前5時16分に出発、周囲は真っ暗である。ヘッドライトの明かりを頼りに木の階段を登り登山道へ入る。宮之浦岳までは8km、中間点の花之江河までは丁度4kmと案内されている。周囲が見えないのでとても歩きやすく、全く疲れを感じないで歩くことができる。
この登山道は登り一辺倒ではなく、途中で下る場所もあり、足下には木の根がはびこり、岩も多いのでとても歩きにくい。従って意外と登山時間が掛かりそうだという印象を最初から持つ。最初の標識は登山口から600m地点、その次は1km地点でこの案内はとても励みになる。
また、鹿児島県により設置された反射板は、ヘッドライトに反射して進む方向を示してくれるのでとても助かる。途中で暑くなってきたので羽織っていた長袖の服を脱ぎ、いつものように半袖姿で歩く。暗闇の中を快調に歩いており、いつの間にか先行の登山者を追い抜く。全く疲れを感じないので、暗い間に歩くのは距離を稼げる気もする。 淀川小屋と小屋の中 世界自然遺産登録地域の案内を過ごせば、間もなく淀川小屋へ到着、登山口から1.5km地点への到着時刻は午前5時56分、登山口からの所要時間は丁度40分である。やはりこの登山道は時間が掛かることを実感、大して写真も撮っていないのに、こんなに時間が掛かるとは少々ショックである。 淀川に架かる橋と橋から眺める風景 淀川先の橋から眺める風景(動画) 午前6時に淀川小屋を出発。すぐに川に架かる橋を渡り、相変わらず足下の不安定な道を進む。周囲を見回せば空は少しずつ明るくなり始めている。登山口から2km地点を通過、この先で木の間をくぐれる場所を通過する。すぐに登山口から2.5km地点を通過するが500mを約10分のペースで歩いている。
午前6時半を過ぎ、朝日が森の中に差し込んできた。登山開始から初めて明るい場所に到着、この場所には大きな岩があった。周囲を見回すと木の根が張っており、気持ちの落ち着く場所である。この先の大岩の下にはつっかえ棒のようなものが置いてあるが、この光景はよく見るものである。
淀川登山口からは既に3kmを通過、この付近で後から追いついてくる人がいた。普段より少し速めに歩いているのに、この早さは何者と思うくらいの健脚で、この人は秋田から来た70歳の男性である。ここまでの行程を振り返れば、アップダウンもあるものの、傾斜は大したものではなく、時折平坦な道も現れるので疲労感もない。特に周囲が暗い間は全く疲れることがなかった。
ようやく尾根の上に立ち、周囲を見晴らせる場所に到着。空は晴れており絶好の登山日和の予感。西に展望が開けてきたので眺めていると、山頂付近に岩が切られたように並んでいる。この特徴的な岩を山頂に頂くのは高盤岳と思われる。本来ならこの付近に高盤岳の展望所があるはずだが、残念ながら展望所への案内に気づかず通り過ぎてしまった。
少し進めば登山口から3.5km地点、もう小花江河までは300m地点である。展望所の案内に従い右の小道に入る。目の前には風により枝の飛ばされた古存木が目立ち、周囲の山々には大岩が目立っている。東北東方面の雲の上に浮かんでいるのは高塚山と思われる。 小花之江河湿原 小花之江河の風景(動画) 展望所を出発、木製階段を下った先は小花之江河の湿地帯である。屋久島の中央部標高約1600mに位置する花之江河・小花之江河湿原は、日本最南の高層湿原である。なお、この湿原はおよそ2600年〜2800年前にできたものと推定されているそうだ。季節毎に美しい花が咲く湿原なのだろうが、今の季節は端境期なのかも知れない。それにしても美しい湿原で、進行方向に見えている立ち枯れの木さえもこの湿原の中では美しく見える。この木は古存木と呼ばれ、台風により枝をもぎ飛ばされたものが多い。 花之江河湿原 花之江河の風景(動画) 小花之江河を出発、約400m進むとすぐに花之江河へ到着。この湿原はとても広く、最南の泥炭湿原であり、この場所は栗生登山口と標識に書かれている。また、花之江河から宮之浦岳までは3.8km、石塚小屋まで1.2km、携帯トイレブースまで70mと案内されている。
大岩の横から花之江河を振り返った後、整備された木道を進む。いつの間にか高盤岳は背後の南方向へ移動しているが、山頂の特徴的な岩はまだ眺めることができる。少し進むと黒味岳への分岐へ到着、もう目指す宮之浦岳までは3.3kmとなっている。この黒味岳へは帰りに時間があれば登ってみたいと思っている。
この先から坂を下ることになり、ロープの渡された岩場を慎重に下る。一旦鞍部に下りた後は登り返すことになるが、とてもワイルドな岩道なので、久しぶりにわくわくする。岩場を少し登ればこの先からは岩の上を流れる沢に着く。夏場はとても涼しく感じる気持ちの良い場所である。
南西方面には、山頂部に大きな岩の立つ黒味岳がそびえており、青い空をバックにした黒味岳はまさに美しい山である。少し岩場を踏ん張れば岩の多い平坦地へ到着、この場所は投石平と言われる場所である。平坦な岩の上からは周囲360度の展望が広がり、北には投石岳、南西には黒味岳といずれも山頂部には花崗岩が目立っている。
投石平から眺める風景(動画) そしてなんと言っても北西方面に見えている山脈、これは永田岳へ続く稜線ではなかろうか。ただし、目指す宮之浦岳は見えているのかいないのか。ここまで来てもまだよくわからない。とにかく山頂までは2.6km、まだまだ先が長い。西には急峻な山頂部を持つ山が見えているが、残念ながら名前はわからない。このあたり全く屋久島の山には素人である。
投石平の先で投石岩屋を通過、足下にリンドウの花を眺め、急な岩場につけられたロープを頼りに斜面に向かう。古存木の上には青空が美しく、この先にそびえる黒味岳を眺めながら足下には水場を過ごす。進行方向にはやはり永田岳へ続く山脈が見えているようだが、宮之浦岳は手前の栗生岳にさえぎられているような気がする。
間もなく湿地帯を通過、木道を進めば左右にはヤクザサが目立ってきた。右に遭難碑を過ごし、更に木道を進む。少しずつ高度を下げれば再び湿地帯に到着、この付近には本当に湿地帯が多い。もう宮之浦岳には2km、整備された木道を快適に進む。周囲に広がる山々には特徴的な岩が目立ち、一つ一つを眺めながら自然の造形美に感動する。
北の正面に栗生岳を望む場所には、割と大きな湿地帯があり、この池に流れ込む清流はとても美しいエメラルドグリーン。こんな高い場所で眺める池はたぶん初めてだろうと思う。栗生岳は青空をバックにとても美しく、この山を越えればいよいよ目指す宮乃浦岳。少しずつ感動の場所へ向かっている。
間もなく宮之浦岳へ1km地点を通過、ここには携帯トイレブースが用意してある。このブースの先には特徴的な岩が立っており、まるでカラス天狗のようにも見える。背後を振り向けば翁岳が聳えている。この翁岳へは登ることができるみたいで、ヤクザサの中に登山道を眺めることができる。
さて、左右にヤクザサを見ながら整備された木道を登る。周囲に広がる大岩を眺めながら高度を稼げば、もう宮之浦岳まで500m、坊主頭のような岩を後から眺め、この岩の下に向かえば祠が置かれていた。
栗生岳を過ごし最後の坂へ向かう。左右にヤクザサを見ながら進めば、もう大した傾斜は残っていない。ふと右の北東方面を眺めると雲がわき出している。この雲が山頂を覆ってしまうと大変なことになる。ここで本登山中初めて焦り始めた。そこで急いで山頂を目指し、岩の目立つ場所へと向かえば、間もなく1935mの宮之浦岳山頂へ到着。とうとう一等三角点の置かれた九州最高峰へ登頂することができた。
北西には九州第二の高峰永田岳がくっきり見えており、その先には水平線が広がっている。なんと素晴らしい展望だろうか。北東方面からはやはり雲がわき上がっており、少しずつ視界を覆い始めている。南東方面には翁岳・栗生岳・安房岳・投石岳・黒味岳と素晴らしい展望広がる山頂に満足。こんなに展望の良い日に登ることができて、それはもう幸せ感あふれる山頂である。 永田岳 南の展望 快晴の宮之浦岳山頂から眺める展望 宮之浦岳と永田岳の鞍部には湿地帯が広がっており、この登山道途中にはたくさんの登山者が休憩をしていた。当初は永田岳への縦走を考えていたが、宮之浦岳山頂到着時刻は9時47分。当初の到着予定は9時半だったが、既に20分程度過ぎている。本日の歩行速度では、永田岳への往復時間は2時間半程度が必要と思われる。そこで永田岳は諦めてのんびり昼食を摂ることにした。 翁岳・栗生岳・安房岳・投石岳・黒味岳 九州最高峰の宮之浦岳から眺める風景(動画) 展望広がる山頂にて昼食を摂り、しばらく周囲を眺めていると、少しずつ雲がわき上がっているのがわかる。そこで第二の選択である黒味岳を目指すため山頂を出発することにした。宮之浦岳を振り返りながら、山頂の場所を確認。山頂の位置は意外な場所であることがわかった。
少しずつ雲が周囲を覆っており、午後になると山頂付近の天候が一変することがわかった。要所を通過し黒味岳分岐を目指す。投石平を通過、投石平から700m、花之江河へ500mの位置が黒味岳への分岐である。
案内に従い坂へ向かえば、いきなりロープの渡された岩場へ向かう。木の根のはびこる道を通過し、更に岩場を抜ける。黒味岳への道はわくわくするようなワイルドな道である。周囲に岩の目立つ場所を通過、ザラザラした花崗岩の道を楽々進む。
やがて少し霧に包まれた黒味岳の山頂が進行方向に現れてきた。これは感激の瞬間である。山頂周辺は岩に包まれ、当然山頂も岩である。少し平坦な道を進めば、眼下に花之江河が広がり、霧が晴れれば素晴らしい展望が広がる。最後にロープの渡された岩場を登れば、黒味岳の山頂手前に到着。もう少し岩の上に向かい、岩の割れ目を勇気を出して飛び越えれば山頂に到着した。周囲に遮るもののない黒味岳からは360度の展望が広がり、眼下は絶壁でまさに絶景である。
黒味岳の山頂から眺める展望(動画) 黒味岳を出発、下りは早くすぐに黒味岳分岐へ到着、この先少し進めば花之江河。霧の発生している湿地帯にはヤクシカがおり、何かを食べていた。これは本当にのどかな風景である。もう登山口までは残り4km、朝来た道を引き返すだけ。木の根の道や石の道を躓かないよう慎重に戻り、早朝眺めることのできなかった風景を楽しみながら登山口へ到着。到着時刻は午後4時2分、充分宮之浦岳を堪能することができた。
淀川登山口からの帰りには推定樹齢二千年の川上杉を観賞、この木はとても大きな杉である。林道新設の際、伐採される予定だったが、担当者の杉を守る決心から路線を変更し、この杉が残ったそうだ。この杉の名前はその担当者の名前を付けたと案内されていた。 樹齢二千年と言われる川上杉 川上杉からもう少し下れば樹齢三千年の紀元杉が立っている。本当に大きな紀元杉を間近に見ることができるとは、とてもうれしい気持ちになる。整備された木道を通り紀元杉の周囲を眺め、しばらく立ちつくす。こんな大きな木を眺めるのは、台湾阿里山の香林神木以来。まるで歴史の生き証人と会ったような気がした。 樹齢三千年と言われる紀元杉 帰りには多くのヤクザルと遭遇、自然あふれる屋久島を充分堪能することができた。民宿へ戻る途中で、ヤクスギランドへも立ち寄り、太忠岳への登山口を確認。明後日登るかも知れないので場所の確認だけはしておいた。
この民宿では初めて夕食を頂いた。トビウオの焼き物に亀の手入りのみそ汁、新鮮な刺身もあり、豪華夕食に満足した。さて、明日はもう一つのイベントの縄文杉。天気予報では曇りとか。とても楽しみである。 小花之江河 花之江河 黒味岳 古存木 湿原と栗生岳 奇岩 歩いた稜線 永田岳 前の山 白谷雲水峡から太鼓岩へ を見る 次の山 屋久島 世界自然遺産の縄文杉 を見る 登山口周辺の地図はこちら 鹿児島県屋久島町 宮之浦岳 登山口付近のMAP |
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