白谷雲水峡から太鼓岩へ (たいこいわ)鹿児島県屋久島町

トップに戻る      登った山のリストを見る      山名アイウエオ順

2011年10月17日

白谷広場 →0:20→ さつき吊橋 →0:50→ 白谷小屋

 →0:30→ 辻峠(標高979m) →0:15→ 太鼓岩 →0:15→ 辻峠

 →0:30→ 白谷小屋 →0:30→ さつき吊橋 →0:15→ 白谷広場

全歩行時間 3時間25分

 午前5時に起床、朝食後昨日頼んでおいた登山弁当を持って民宿永久保を出発、本日向かうのは白谷雲水峡で、宮崎駿監督の映画「もののけ姫」のモチーフとなった苔むす森を散策し、最後は展望広がる太鼓岩登山である。

 屋久島の中心部から見て東に位置する永久保地区より県道77号を反時計回りに進み、屋久島空港を右に過ごす。ふと背後に広がる東の海を眺めると朝日が輝いていた。そのまま県道を進めば、島の北東に位置する宮之浦地区に入る。左に徳州会病院を過ごした先で白谷雲水峡の案内に従い交差点を左折、県道594号を道なりに進む。

宮之浦から眺める朝日 白谷広場

 途中の路上には猿が寝っ転がっており、のどかな風景に心が和む。宮之浦の交差点から40分程度で白谷雲水峡の駐車場へ到着、時刻は午前7時15分だが、駐車場の6割程度は既に埋まっていた。のんびりと登山準備をし、駐車場を出発する。

 休憩所横に置かれた「水源の森百選 白谷雲水峡」の石碑を眺めて休憩所を出発、すぐに整備された階段を登る。眼下には木の間越しながら清流が流れている。大きな岩を越え、左手には岩の上に小規模な滝を見ることが出来た。白谷川はモスグリーン色で、とても綺麗な流れを見ながら遊歩道を進む。

すぐに現れる大岩群 清流白谷川

 すぐに土埋木(どまいぼく)の案内があり、江戸時代に伐採された屋久杉のうち、利用されなかった枝や幹、根株は200年から300年たった現在でも腐ることなく残っている。この残材は土埋木と言われ、貴重な屋久杉工芸品として利用されているそうだ。この先には二代杉が立っており、初代の杉の切り株の上に種子が落下。発芽生育した二代杉と案内されている。このようにして世代交替が行われることを切株更新というそうだ。この先屋久島の森や山を散策する際には、このような切株更新を多く目撃することになる。

飛流おとしの滝 広い遊歩道

 左に渓谷を眺めながら進むと、正面には有名な飛流おとしの滝が現れる。ものすごい音を立てて流れ落ちる豪快な滝にしばらく見とれていた。この先で弥生杉への分岐を右に過ごし、もう少し階段を登るとさつき吊橋の前に着く。この季節には橋の中央に蜂が居るようで、注意するよう警告されていた。この橋を渡らず原生林コースを採って白谷小屋(2.2km)へ向かうことも出来るが、時間配分が不明なのでまずは最短距離を採り、さつき吊橋を渡ることにする。

さつき吊橋 橋の下に転がる大岩

 こちらは楠川歩道コースとなり、白谷小屋までは1.3kmと案内されている。なお、登山起点の管理棟からこの場所までは0.5kmである。さつき吊橋を渡り、途中から橋の下を眺めると大きな岩がゴロゴロしている。これらの岩は大雨などによる土石流の結果、流されてきたものと想像される。

木の根の張り出す登山道 石積み歩道

 吊橋を渡りきれば、この先からまさに登山道が始まる。木の根が張りだし、岩が無造作に配置されたワイルドな道である。途中に特徴あるヒメシャラの木の立つ楠川歩道は、藩政時代、島津藩へ年貢として上納されていた平木(屋久杉を加工した屋根を葺く小板)を担いで搬出するために使われたと言われている。案内には、自然の石をうまく利用した石積み歩道となっており、300年から400年の時を経た現在でも当時の状態で残っており、歴史的にも貴重なものと言えるそうだ。歩道を眺めていると、確かに人工的に岩を配置していることが窺われる。

大きな切株

 苔むす岩を眺めながら山腹につけられた歩道を進む。周囲は木々に覆われて展望はないものの、とても雰囲気の良い場所を歩くことができる。苔むす岩と緑の樹林、時折霧の流れる歩道はとても幻想的な雰囲気を醸し出している。途中で大きな切株を過ごすが、とても立派な切株に思わず足も止まる。中央部を覗いてみると大きな穴がぽっかり開いていることがわかる。

清流 川を渡る

 水量の豊富な屋久島なので、清水があちこちから湧いており、汗をかいても水場に苦労することはない。眼下に渓流を眺めながら進むと、やがてこの渓流を渡ることになる。なお渡る起点には、増水時に引き返すよう警告されている。

木の根の張る道 原生林コースとの合流点

 渓流を渡り根の張る道を進むと、野生の鹿が目の前を横切る。屋久島では当然の出来事なのだろうが、こんなに近くで鹿を眺めることは、とても新鮮な驚きでもある。木の根に躓かないよう歩道を進めば、先ほど分岐した原生林コースとの合流点へ到着、さつき吊橋からは45分の行程である。

くぐり杉 七本杉

 少しの傾斜を踏ん張れば着いたところはくぐり杉、この杉の下をくぐり更に先へ進む。 すぐに白谷小屋への分岐を通過、この小屋には帰りに寄ることにする。階段状に岩の置かれた遊歩道を慎重に進むと目の前には大きな杉の木が現れた。これは七本杉、頭上を見上げると枝は5本に見える。昔は7本の枝があったのかも知れない。

苔むす森

 この先に広がるのが苔むす森、宮崎駿監督のアニメ「もののけ姫」のモチーフとなった森である。苔むす岩と周囲に広がる森の雰囲気が、落ち着いた感じでとても良い。苔の密集した美しい切り株を眺めながらのんびり辻峠を目指す。

苔の美しい場所が続く

苔むす森への入口

映画の舞台のような場所 辻峠

 周囲に広がる風景は、映画「もののけ姫」で見た森の風景と同じように見えるのがとても不思議だ。間もなく辻峠へ到着、辻峠から目指す太鼓岩へは登りと下りの道が別々の一方通行になっている。なお、辻峠から楠川別れまでは70分と案内されており、そのまま縄文杉を眺めて高塚小屋に泊まり、翌日宮之浦岳を目指すのが一般的で、効率的と思われる。

太鼓岩への道 展望の太鼓岩

太鼓岩の上から眺める展望

 さて、登山初心者の私は、切り株の横から太鼓岩の案内に従い坂を登る。入口から木の根の張る急斜面が続くが、登山道自体はわかりやすく、ロープで仕切りがしてあるので道に迷う心配はない。辻峠からはゆっくり15分で展望広がる太鼓岩へ到着、岩の上から周囲を見回すと目の前には霧が発生しており、向かいに見えるはずの山々は残念ながらすっきりした展望ではなかった。

奥岳方面 太鼓岩の下の展望岩

 太鼓岩の下にも展望の岩があり、下りることもできる。しばらく周囲に広がる霧の晴れるのを待ったが、いっこうに晴れる気配がないので太鼓岩を出発することにした。下山は一周回りで下りることになるが、登山時より少々遠回りをする。それでも整備された登山道は快適で15分程度で辻峠へ到着、苔むす道はとても快適である。

木漏れ日の美しい風景

苔むす森へ差し込む光

 辻峠からはピストンで登山口まで引き返すことにした。周囲は少しずつ明るくなり、段々陽が差し始めた。しっとりした苔むす森も素晴らしいが、陽の差す森も美しい。光の加減が少し違うだけで周囲に広がる印象は全く違う。大岩を眺め、苔むす登山道を眺めながら下りていると、日の光を浴びた登山道は、一段と美しさを増すようだ。

再び苔むす森 白谷小屋

 光と苔の芸術を堪能しながら更に下れば、再び苔むす森へ到着、美しい風景を堪能していると、目の前では大勢の高校生が記念撮影をしていた。更に七本杉を通過し、白谷小屋へ到着。時刻は午前11時を過ぎていたので早めの昼食を摂る。

二代くぐり杉 原生林コース

 昼食後、白谷小屋を出発。三叉路まで下り、時間があるので二代くぐり杉方面へ向かってみた。すぐに二代くぐり杉へ到着、記念撮影の後もう少し進むが、この道はアップダウンが多いようだ。明日は長丁場の宮之浦岳登山が控えており、足の負担を軽減するため、元来た道を帰ることにした。

ヤクシカに遭遇 清流が続く

 原生林コースを引き返していると鹿に遭遇。更に沢を渡り楠川歩道を下る。登山時と違って明るい木漏れ日を浴びた森の中を下るのは全く違う景色に見える。やがて杉の切り株を通過、苔むす岩の道やヒメシャラの木を通過、何気ない木でさえもこの森の中では輝いて見える。

ヒメシャラ 飛竜おとしの滝

 緩やかな傾斜が終われば、吊橋へ向かって急な斜面を下り、すぐに吊橋へ到着。朝とは違う風景を眺めながら更に下れば、落差50mの飛流おとしの滝へ到着。轟音を上げる滝はまさに豪快そのものである。美しい渓谷を眺めながら更に下れば、管理事務所前を通過、白雲雲水峡は心に残る散策路である。駐車場を出発、途中で「不老長寿の益救(やく)雲水」を見つけたので飲んでみる。屋久島の銘水はいずれも美味しい銘水である。

不老長寿の泉 益救名水 堂々と歩くヤクシカ

 銘水を飲んでいると再びヤクシカに遭遇、途中の雲の展望台バス停からは眼下に広がる大海原と宮之浦港に浮かぶフェリーを眺める。宮之浦まで下り、交差点を右折、県道77号を時計回りに進む。途中には楠川温泉の案内があり、この温泉は400年の歴史ある温泉で、泉質はアルカリ性単純泉と案内されていた。

宮之浦港 名峰愛子岳

 歴史と文化の里楠川地区を過ぎ、更に県道を進んでいると右側に愛子岳登山道入口を過ごす。標高1235mの愛子岳を麓から眺めると美しい三角錐をしている。山頂付近は湿気の多い様相をしており、上昇気流により雲が湧いているようにも見える。

田代海岸の枕状溶岩

 県道を更に時計回りに進み、屋久島空港を過ぎて永久保地区を通過、左にバス停「桑野」を見てこの先の分岐を左折、そのまま道なりに進むと町指定文化財「枕状溶岩」を見ることができる。この暗褐色の塊は、長い年月を掛けてはるか太平洋のかなたから太平洋プレートの移動により、屋久島の海岸へ運ばれてきたものである。

 この枕状溶岩が噴出してこの田代海岸へ運ばれてくる気の遠くなるような過程を考えれば、我々の生きている時代のなんと短いことを思い知らされる。海岸付近に広がるガジュマル林を眺めて田代海岸を出発、時計回りに県道を進み安房地区に入る。

トローキの滝 赤い橋の後ろにそびえるのはモッチョム岳

 そのまま県道を時計回りに進み、麦生地区に入るとトローキの滝の案内が見えてくる。「屋久島町まごころ市ぽん・たん館」の向かいに小さな入口があり、ぽん・たん館の駐車場に車を置いて平坦な遊歩道を進む。遊歩道は最後で岩の道に変わり、慎重に下りて行くと、折り返すような方向に、小さな滝が見えた。たしかに直接滝が海に流れ落ちており、この光景は珍しいものである。赤い橋の下にトローキの滝があり、橋の上には名峰モッチョム岳が聳える。この組み合わせには、素晴らしいと言う以外の言葉が見つからない。

名湯 尾之間温泉

 トローキの滝を出発、島の南に位置する尾之間地区に入り、北を眺めると山頂部に美しい岩山のモッチョム岳がそびえている。この麓に本日入浴予定の尾之間温泉がある。この温泉の入浴時間は午前7時から午後9時半まで、泉質は硫黄泉で硫黄臭のする気持ちの良い温泉である。温泉内の注意書きには「シャワーは洗髪だけにして下さい」と書かれており、身体を洗うには浴槽内の温泉を使用するようになっていた。

 先人の作法にのっとり身体を洗い、浴槽の中に入ると、すごいヌルヌル感、これは感激ものの温泉である。足下には玉石が敷き詰めてあり、足の裏が気持ちよく、少々熱めの温泉はぽかぽかする。白谷雲水峡で疲れた身体は完全に元気を取り戻したようだ。温泉から上がり、涼んだ後に千尋の滝へ向かう。

雄大な千尋の滝

 駐車場には観光バスが待っており、左右に広がる大岩の間に大きな滝が見えてきた。千尋の滝の落差は66m、とても雄大な滝である。これに前日眺めた大川の滝を含めると、屋久島の有名どころの滝は一通り観光したようだ。

飛流おとしの滝

苔むす森

枕状溶岩

トローキの滝

千尋の滝

 前の山 屋久島観光 を見る

 次の山 宮之浦岳・黒味岳 を見る

登山口周辺の地図はこちら 鹿児島県屋久島町 太鼓岩 登山口付近のMAP

登山リスト(あいうえお順)に戻る

登った山のリストに戻る

トップに戻る