大崩山(おおくえやま)宮崎県延岡市

2008年7月18日

登山口 →0:50→ 大崩山荘 →1:30→ 避難岩屋 →1:30→ 袖ダキ

 →0:40→ 下湧塚  →0:20→ 中湧塚 →0:40→ 上湧塚 →4:10→ 登山口

全歩行時間 9時間40分

 予てからの計画通り大星さんと九州の山へ向かう。午後6時に柳井を出発、熊毛インターから高速道路に乗り、小倉東インターで高速道路を下りる。そのまま国道10号線を南下、北九州市・行橋市・豊前市を過ぎて大分県に入り、中津市・宇佐市・豊後高田市を通って別府市に着き、別府湾の近くで遅い夕食を摂る。

 夕食後別府市を過ぎ、大分市を通って大野川沿いを進む。豊後大野市に入り久原交差点で国道10号と別れ国道326号を走る。三重地区を過ぎ、日向街道を更に進むと三国トンネルを抜け、道の駅宇目を過ぎる。長い奥の原トンネルを抜けると宮崎県延岡市北川町、上赤渓谷を左に過ごしながら進むと、右手に大崩山への標識を見たので右折、下赤祝子川林道を進む。

 この林道は曲がりくねった道であり、しかも途中には鹿・タヌキ・兎が走り回ってとても危ない林道。ゆっくりと時間を掛けて着いたところは上祝子地区、ここには美人の湯で有名な「祝子川(ほうりがわ)温泉」がある。そのまま大崩山の登山口に向かい、午前2時前に登山口へ到着、この場所にて前泊する。山口県からは7時間以上の時間を要した。

平成20年7月19日

 昨日遅く寝たにも拘わらず午前5時に起床、大星さんの奥さん手作りのパンをいただく。これがとても美味しい。朝食後すぐに九州最後の秘境と言われる大崩山に向かう。登山口の手前には登山道案内と各登山コースの所要時間の概要が記載してある。「登山者の皆さんへ」と書かれた注意事項に気になる項目があった。

 大崩山は、険しく複雑な地形の山なので初心者だけの登山には向きません。

 大崩山は、長時間の難コースが多いので日帰りでも十分な装備(照明具や雨具、非常食等)を持参しましょう。

 大崩山は、降雨による短時間増水があるので、天候に注意しましょう。

 但し、これは後になって「なるほど」と思ったことで、実際には案内板を眺めただけで、午前6時10分大崩山登山口に入る。

大崩山登山口 大崩山登山道案内板

 山火事注意と書かれた横断幕の下を通り、岩の多い道を登って行く。周囲に大きな岩が多いので、最初からワクワクしながら歩いている。薄暗い樹林の下で岩に躓かないよう、滑らないよう慎重に高度を上げて行く。周辺には清水の湧き出す場所もあり、とても涼しげな感じだが、ほとんど風が吹かないので最初から汗をかきかき進んでいる。

岩の多い道を登る 清水の湧き出す場所

 登山口から15分程度入ったところで木製階段が掛けてあるので登って行く。階段の上にはロープが渡してあり最初から心が引き締まるような登山道だ。古い木の橋と滑り止めに渡されたロープの場所を過ごすと左手に平坦な場所が現れ、眼下に祝子川の渓谷が広がっている。川の水は澄んで碧く、頭上には大きな特徴的な岩山が見えている。これからあの岩の近くまで行くことになるようだ。周囲の渓谷を眺めて小休止の後広場を出発する。

木製階段を登る 古い木の橋を渡る
眼下に渓谷が広がる 岩峰を見上げる

 この先で沢に掛かる木の橋を見るが、不安定そうなのでこの橋は迂回。すぐに大崩山荘の山小屋が見えて来たので中に入り、どんな所なのかを確認した。中は広く宿泊することも出来るようだ。登山口から山小屋まではゆっくり歩きで50分の時間を要した。

不安定な橋 大崩山荘

 山小屋を出るとすぐに三里河原と坊主尾根への分岐があり、この分岐は坊主尾根を採る。標識によれば大崩山山頂までは4660m、少し平坦な道を進むとすぐに岩の斜面となり、岩場に設置されたロープを助けに一気に高度を上げて行く。ワクワクするようなロープと岩の道に気分は最高、三点確保を基本に無事乗り切り沢に着く。

細い岩道を進む ロープを伝って岩を登る

 この先にある湧塚尾根と三里河原の分岐で小休止、沢の冷たい水を飲む。この分岐から大崩山山頂まで5190m、先程の分岐の距離表示よりも増えていた。

沢の水が冷たい 湧塚尾根と三里河原の分岐

 分岐を過ごすと祝子川に向かって下りて行き、河原から大きな小積ダキを眺める。周囲の渓谷が美しく、何時まで見ていても見飽きない景色だが、目の前にはロープの渡された心細い橋が架かっており、左手でロープを掴みながら慎重に橋を渡りきる。橋の先にはいかにも滑りそうな橋が待っており、油断出来ない局面が続く。

祝子川の河原と小積ダキ 祝子川に渡された橋を渡る

 樹林の下に入ると左手には炭焼きの跡らしき場所を過ごし、少し進むと大岩の下に岩屋を見る。岩屋を過ごし更に進むと再び大きな岩屋が現れた。この付近には本当に大きな岩がいっぱいだ。

炭焼きの跡らしき場所 大きな岩屋

 この岩屋付近の沢にて顔を洗い、頭を冷やして再出発、岩の間を抜けて行くと再び目の前に大きな岩が現れるのでロープを伝って越える。沢沿いに付けられた道を慎重に進み、避難岩屋まで5分の標識を過ごすとすぐに岩と岩に付けられた道を抜ける。この先には平らな大岩があり、ここで登山道は右に向く。

再び大きな岩屋 沢で頭を冷やす
岩と岩の間を抜ける 平らな大岩が現れ登山道は右に向く

 時刻は8時50分、登山開始から既に2時間40分を経過、登山口からここまでは2550mの行程だ。上を眺めると大きな岩が空の手前に覗いている。確実に高度は上がってきているようだ。

岩の間を抜ける 頭上には大きな岩が見えている

 この先から岩の多い急な斜面を登ることになり、途中にはアルミ製の梯子も設置してある。梯子の次はロープを掴んで岩場を登る。いよいよワイルドな登山のウオーミングアップ。岩の下では木の枝を掴んで高度を上げ、大きな岩を左に過ごすと再びロープを掴んで高度を上げる。ワクワクするような木の根の道を楽しむ。

梯子に向かう 匍匐(ほふく)前進
ロープを伝って登る 急な岩場が続く

 テープを目印に向かう方向を定め、ルートを確認しながら登る。久し振りのルート探しがとても新鮮だ。急な坂道は手と足の共同作業でバランスを取りながら高度を上げる。登山の初心者ながらゆっくり進めばなんとか滑らずに登れるものだと感心。

ロープの助けを借りる 足下に注意

 ロープの助けを借りながら進んでいると左に袖ダキへの分岐標識が現れた。頭上を見ると岩場にロープが垂らされている。このロープを伝ってゆっくりと岩場を登ると突然視界が開け、大きな岩の上に着いた。これが袖ダキと呼ばれる場所のようだ。

木の根の続く道 岩場に渡されたロープ

 正面には豪快な小積ダキ、右手には美しい湧塚の岩峰が広がり絶景というのにふさわしい場所である。・・・この岩峰過去に見たことがあるが一体どこだっただろうか・・・・、正解は九州百名山の裏表紙だった。

小積ダキ 袖ダキ展望所 背後には岩峰が続く

 岩場を伝い少し下りると、来るとき通った祝子川の徒渉場所が見えている。向かいにはやはり美しい岩峰が広がり遠くには祝子ダムや祝子の集落も見えている。袖ダキにて大休止の後湧塚に向かう。

袖ダキ展望所から眺める岩峰

 袖ダキから岩場をそのまま伝って登り、スズタケの茂る登山道に戻る。心細い木製の橋を渡り、岩場に付けられたアルミ梯子を登る。脆い岩場なので慎重に進み、岩場を過ごすと木の根のはびこる登山道。いずれにしても急登を踏ん張り高度を一気に上げている。と・・・・、またアルミ梯子が現れた。

袖ダキを出発 岩峰を見上げる
不安定な橋を渡る 梯子が現れた

 梯子を登ると下湧塚と大崩山の分岐標識が立っている。何の疑いも持たずに下湧塚へと向かう。すると二段の梯子が待っており、これを登り切ると更に二段の梯子、その上にもまた梯子があり、梯子を登り切ると今度はロープが待っていた。

下湧塚と大崩山の分岐標識 梯子が続く
更に梯子が続く 岩峰手前にはロープが渡されている

 このロープを伝って登った先は快晴の下湧塚、周囲360度の展望地である。この展望地でも休憩を取り、周囲の展望を眺める。展望地毎に休憩を取っているのでなかなか前に進むことが出来ない。下湧塚を出発しそのまま岩峰を通って中湧塚へと向かう。

下湧塚 中湧塚方面

中湧塚へ向かう

 中湧塚まではロープを伝う程度で大した苦労もなく進み、大岩の上から展望を眺める。中湧塚から上湧塚方面を眺めていると時刻は12時半を過ぎている。遅めの昼食を中湧塚にて摂る。今回は時間が無いのでおむすびをお茶で食べる。それでも20分以上の休憩を取り、中湧塚を出発する。これからは梯子を下りて一旦高度を下げる事になる。

中湧塚から下湧塚を眺める

中湧塚から小積ダキを眺める

ロープを伝って中湧塚の上に立つ

上湧塚の岩峰 中湧塚から高度を下げる

 梯子の次は岩に渡されたロープを伝って下りて行き、木の根の茂る道を下りると再びアルミ梯子を下りる。この先には網目状の橋が渡されており、慎重にこの橋を渡りきり、もう一度梯子を下りると大崩山への標識が現れた。

ロープを伝って下る 網目状の橋
スズタケの茂る道 青空の先には傾山?

 スズタケの茂る道を過ごし、岩の多い場所を進むと北に展望が開け、遠くには傾山らしき山が見えてきた。ゆっくり歩きで進んでいると、単独行の女性が下山して来たのでこれから先の行程を聞く。時刻は既に午後1時30分、登山開始からは7時間以上を経過しているが、これから山頂を往復して登山口まで帰るには無理があることを聞き、この時点で山頂三角点へ向かうことを諦めた。この原因は途中の展望地にてゆっくり景色を眺めていた事に尽きる。

上湧塚へ向かう

 岩の道をもう少し進むと上湧塚に到着、荷物を下ろして上湧塚へと向かう。まずはアルミ梯子を登り、その先はロープを伝って岩の間に入る。最後は岩の間を抜けて大岩の上に立つ。この作業はなかなか難しいが、上湧塚の上に立つとその展望に疲れを忘れる。

ロープを頼りに狭い岩の間を進む 岩の間を抜け出る

 先程まで立っていた中湧塚の岩峰、今日は行けない大崩山の山頂、遠くには傾山の山並み、それこそ何時までも眺めていたい展望だ。

上湧塚から中湧塚を眺める

上湧塚から大崩山の山頂を眺める

 さあ、上湧塚を出発するときが来た。スズタケの茂る登山道を登って行くと「大崩山へ1時間15分」の標識を過ごす。上湧塚からは8分でリンドウの丘経由、坊主尾根への分岐に着いた。この分岐から山頂までは1630mだがここから下山を始める。

リンドウの丘経由、坊主尾根への分岐 避難岩屋

 分岐を出発すると2分で避難岩屋を過ごし、その先で展望所に着く。向かいには湧塚の岩峰が美しく、先程まであの岩峰の上にいたことがとても嬉しい。展望地を出発すると2分で水場に到着、冷たい水をたっぷりと飲み、ペットボトルに水を補給する。これで下山までの水は確保することが出来た。

展望所から向かいに湧塚の岩峰が美しい 水場に到着

 水場を過ごすとスズタケの茂る登山道を下りて行き、山頂から下りてきた道と合流、これからは坊主尾根に向かって下りて行く。背の高さ以上のスズタケをかき分けながら下りて行くと周囲は明るい道に変わり、気分も少し明るくなる。向かいの岩ダキには人の顔やペンギンに見える岩が並んでおり、眺めていると気持ちも和んでくる。

山頂から下りてきた道と合流 背の高さ以上のスズタケの中を下りる

岩峰が美しい

湧塚の展望

 岩峰を観賞した後は再び下山を開始、少しずつ陽が傾いていることが分かり、休憩を取るたびに下山予定時刻が遅くなっている。まもなく小積ダキの分岐に着くが小積ダキを往復する時間は残っていない。この分岐も坊主尾根に向かって下りて行く。

小積ダキの分標識 小積ダキを見上げる

 大岩に垂らされたロープを伝って下り、下から眺める小積ダキはとても素晴らしいことがわかる。更にロープを伝い、その先では岩壁に沿って岩腹を横切る。これもなかなかスリルのある場所で、無事に帰れるかは心がけ次第である。

岩壁に沿って岩腹を横切る

 岩腹を横切れば今度はアルミ梯子を下り、これから先は梯子とロープと橋の難所を慎重に下りて行く。周囲にはガスが広がり視界も遮られてきた。苦労しながらの下山行程も少しずつ終わりが見えてきた。林道経由の下山道と山荘への近道の分岐に到着、時刻は午後4時43分、周囲は少しずつ薄暗くなってきた。ここは安全策として林道を経由して下りる事にした。

梯子を下りるとロープを伝い、また梯子を下りる

 梯子の下は岩場 不安定な橋はロープが頼り
ガスが広がり始めた 分岐は林道方面を採る

 林道の分岐から10分で沢を通過、この先で木製の「林道→」の標識を見て一安心、これから先は道が広くなってきた。ところが林道は安全ではあるが少しずつ高度を下げて行くので時間は掛かる。木製の林道標識から25分で町道祝子川線終点の標識に着いた。

沢を通過 町道祝子川線終点を過ぎる

 更に25分で清水の湧き出る場所に着いたので冷たい水を飲む。清水の場所から20分で大崩雨量観測所を過ぎ、更に20分で橋に着いた。ただし、この橋は工事中だったので苦労して対岸に渡る。橋を渡ればもう登山口までは3分、無事一周回りで帰ることが出来た。

清水の湧き出る場所 祝子川に到着

 時刻は午後6時40分、12時間半も山中を彷徨っていた事になる。荷物を整理して車に積み込み、大崩山の登山口を出発、少し下りて祝子川温泉美人の湯に向かう。貸切状態の温泉にて一日の疲れを取る。露天風呂からは大崩山が夕日に染まっている。いつかあの山頂に行くことができるのだろうか。

祝子川温泉美人の湯

 祝子川温泉を出発、来る時通った下赤祝子川林道を通り国道326号に戻る。国道を豊後大野市に向かって引き返し、途中のコンビニで夕食と明日の朝食・昼食を買い込み、国道502号を西に進み道の駅「とよかわ」に着いた。ここで大星さんと夕食を摂り、酒を酌み交わし今日の登山について話し合い、10時過ぎに就寝する。

祝子川

岩屋

小積ダキ

岩峰

袖ダキ展望所から眺める岩峰(動画)

下湧塚

下湧塚の展望地(動画)

中湧塚

上湧塚

再び小積ダキ

展望

上湧塚から中湧塚の展望

坊主尾根から

登山口手前

 前の山 原山 を見る

 次の 祖母山 を見る

歩いた足跡  

登山口周辺の地図はこちら 宮崎県延岡市 大崩山 登山口付近のMAP

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